欲しいのかな、どうなのかな

雨が降ってない。それだけで今日は最高の一日になりそうだという予感あり。晴れじゃないけどね。光っていない銀色。
今朝は案の定、夢がタルコフスキーだった。いくつもいくつも次々とゆっくりドアを開けて行くような静かな夢で、鮮やかな色や形はなかったのだけれど、深いところで幸せの感じを何度も味わいながら眠りに何度も何度も潜った。

オリンピックへ向けて、どんどんいろんなものが整備されていく。道路、ビル、信号機、地下鉄、公園。なんだかシム・シティの中に住んでるみたいな気分。ゴジラがある日やってきて、全部破壊して行ったりしないことだけを祈る。フと見ると、例の「V巨人の手」の指先のところになにやら「爪」みたいなものを取り付けている。この「爪」のようなものがついたので、ますます手に見えるような。そして指先からは煙がもくもくもく。何なのだろう、何だろう。謎が謎を呼ぶV巨人の手。

今日はお隣A国のサンクス・ギビングデーでホリデーなんだそうだ。こちらC国のサンクス・ギビングデーはもうだいぶ前に終わったけど。ニュースにA国の大型スーパーマーケットの前にできた行列なんかが映っている。サンクス・ギビングデーの翌日はブラック・フライデーと言って、国を挙げてのお買い物デーらしい。破格の割引などが行われるので、それをお目当てにした人たちが全日の朝っぱらから寒空の下に並んだりするんだそうだ。お店が開くのが午前4時で深夜まで営業なんてところもあるらしい。すごいね、そこまでして買うか。

これって、なんとなく日本人が福袋に並ぶ感じもあるのだけれど、景気の悪い昨今、もうちょっと殺伐としたものがある。A国の人は福袋に並ぶだろうか。中身がはっきりしてたら並ぶかもしれないな。A国ではブラック・フライデーを皮切りにクリスマスや新年に向けてのお買い物シーズンが本格的に始まるらしいのだけれど、まるで何かの儀式みたいに買い物へと出陣する人々の図というのは、天使が飛んでいる辺りの角度から見ると、とっても不思議な図に見える。

本当に欲しいのかしら。それとも、どこかの誰か(たぶん、どっかの会社の社長さんとか)が考え出した催眠術にみんなかかったから、欲しいのか欲しくないのかを考える回路が全員麻痺して、「欲しい、欲しい」と金曜日の朝起きたらとにかく叫ぶようになったのかしら。みんなが欲しいというから、なんとなく自分も欲しいような気がして、最初は欲しいかもくらいなのが、欲しいかな、欲しいよね、欲しいもん、欲しい、絶対欲しい、欲しくないわけがない、欲しくなきゃおかしい、欲しいのが当然、欲しいからすてき、欲しいはすばらしい、私はすばらしい、だって欲しいのだもの、などと無限に語尾変化していく。

本当は欲しくないかも知れない人が、長い長い列を作る。
欲しくないんじゃない、なんて言ったら大変なことになる。欲しいことにして、それで覆い隠している巨大な不安がそこにあるのだもの。それに直面するのはものすごく怖い。だから、欲しいことにしておいた方がいいって、みんな思ってるのかもしれない。そして、どこかの社長さんは、そこのところを上手くコントロールすることでお金を儲けていたりするので、買うといいよ、楽しいよ、素敵だよ、とモノがワタシを幸せにしてくれるのだという幻想を何度も何度も楽しい音楽に乗せて繰り返す。資本主義とはこういうことなの...。

本当に本当に欲しいものを、一つだけ、大切に買いたい。何年かかってもいいから、本当に欲しいものを探して。