透明で黄色の小花がついてました

朝起きると、曇りだった。わーい。と、はしゃぐ暇もなく午後からぽつぽつと降り始め、夕刻は雨。なんでも今年のVの11月の降水量は例年よりもずっと多いらしい。あちこちのお店では長靴がバカ売れしている模様。長靴なんてもうずっと履いたことないんだけど。あのガバガバした感触、ギザギザの底。想像するとうっとりする。でも、もしまた履いたらわざわざ必ず水溜まりのあるところを歩いてしまうと思うので、敢えて買ってない。いろいろな花柄やら水玉やら、可愛い風の長靴がウィンドウに並んで「買って〜」と騒いでる。

雨の日にるんるんするためには、長靴、雨傘、雨合羽の三点セットを充実させるのが一番だと思うのだけれど、長靴は持ってないし、雨合羽もるんるんしにくい地味なゴアテックスのジャケットがあるだけ。そして雨傘は。これが謎なんだけれど、Vには何故かお洒落な傘というものが存在しない。こんなに雨が降るのだから、雨傘ビジネスがもうちょっと進化してても良さそうなのに。心惹かれる傘に出会った試しがない。雨が降っても、傘を差さない人が多いから? 傘はイザという時の補助品扱いなので、折りたたみ傘を持ってる人の方が多いような気もする。パっと開くだけで楽しくなるような、きれいな傘があったらな。雨が待ち遠しくなるような、陽気なヤツ。

雨合羽、という名前に一番相応しい雨合羽を持っていたのは、5歳くらいの時だったかな。透明のビニールの雨合羽で、そこに花柄がついていた。透明で、中に着ているものが透けて見える服、というのが驚きで新しくてワクワクして、いつもそれを着る時は得意顔だったんだけれど、仕舞っておいた雨合羽を最初に着る時には、袖のところのビニールがべたんこと両側から張り付いて、ぱりぱりと剥がさないと手が通らなかった。変なビニールの匂いもしたし、雨を通さないのはいいのだけれど、汗も逃げ場がないので、やたらむわりと暑かった。腋の下のところに、空気抜きの小さな穴が開いていて、ポケットもフードもあって、やっぱりいつも得意顔だったのだけれどね。

ああいう雨合羽があったら、「雨だっ!」と大ニコ顔で雨の中に飛び出して、わざとちょっと濡れてみたり、水溜まりに長靴で侵入してそのまま深いところに立ちすくんだり、ガバガバ泥水を掻き回したり、跳ね上げたり、雨合羽の袖のところに雨の水滴が光って乗っかっているのをチラっと見たり、するかもしれないな。あの、あの時の雨合羽があったらね。

でも、あの雨合羽は、ちっちゃすぎるかもしれないな。私はなんだか大きくなりすぎたみたいで、そんな楽しい雨合羽はどれもどうしても絶望的にちっちゃすぎるらしいのだ。ほらほら、水溜まりの中に入っちゃだめよって、脇からそう言う優しい声がそこにあったから、だから雨の中でも楽しかったのかもしれないし。でもでも。それでも、あの雨合羽を今も探してるみたいだ。