かたつむり時間の収穫

今日も雨。一日中ラボで作業。相変わらず顕微鏡的な世界でちゃこちゃことやっている。蠅が一匹入るくらいの額縁を作ったり、ノミが一匹入るくらいの額縁を作ったり。あんまり世界が小さいので、だんだんと感覚が麻痺して何をやってるのかよく分からなくなってくる。マッチ棒の軸くらいの太さの額縁を作ることは世界と何か関係があるのだろうか。人類と何か関係があるのだろうか。宇宙と何か関係があるのだろうか。どこかにいる誰かと何か関係があるのだろうか。ちょっとまた、今自分がどこの机の前に座っているのか、見失いそうになる。

次なる作業はしかし、余り得意とは言えない「デカい」世界なのだ。おー。今回初めて、畳一枚には収まらない大きさのものを作る流れとなり、これまたちょっと途方に暮れている。ここ数年、花のおしべとめしべを数えて選り分けた後で、ついでに花粉の一個一個も選り分けるような作業ばっかりやっていたので、世界はやたらと小さくなり、作業に必要な空間も縦横1メートルを超えることはほとんどなかった。結果として、ラボの作業台以外の場所には不必要なものが積み重なったり寝っ転がったり好き放題やっているので、何か大きいものを想像するための隙間がほとんどない。まずはこいつらをえいえいえいっとどかして、大きめの想像力がすっと降りて来れるだけの場所を作ってやらないといけないな。さてさて。しかししかし。私に「大きなもの」なんて作れるのだろうか。

これまで作っていたものが矢鱈に小さいせいか、小さいものたちはかたつむり時間が好きなせいか、私がボーっとしているせいか、11月となり、雨が降り雨が降る暗い夜の季節になっているのに、突然「あれ。今年は一体何をしてたんだろう」なんてポカっとする。かたつむり時間がどんどん引き延ばされて、冬眠のくまさん時間にとろんこっくり落ちて行こうとするのを、なんとか目をこすりこすり、時には膝のあたりをつねったりしながら「眠っちゃだめ、眠っちゃだめ」と雪山で遭難した人の如く繰り返して、ここまで来たのだけれど。今年収穫したものは、机の上に並べたら50センチの棒四本の中に収まってしまうくらいに小さくて。今見るとそれはなんとも弱々しく頼りなくも見えて。師走という言葉がやってくる前に、思わず夜道を駆け出したくなる衝動あり。わー。

夜、V図書館から借りて来た映画『Extras - series 1』を観る。これは英国版『オフィス』のRicky GervaisとStephen MerchantによるBBCコメディ第二弾。映画のエキストラをやった経験はないのだけれど、なんとなくF犬街のJ親方のところで演劇修行していた頃のことと重なって苦笑した。ってか、苦笑を超えて、泣けるぜ。その前にかなり笑えるけどね。

Vはハリウッド・ノースなどと呼ばれていて、街角、公園、図書館などいろんなところで映画の撮影に遭遇する。従って、巷にエキストラの仕事も結構あるらしい。話の種に一度やってみたいような気もするけれど、やっぱりちと泣けるのでやめておこう。えーん。ぐすん。

Extra エキストラ/the complete first series [DVD]

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