その窓ちょっと(永遠に)お借りします

雨。今日は本格的な雨で、たぶん一日中絶対に晴れ間は見えないなというのが朝一番から確定。それにしてもよく降るなあ。上空はどうなってるんだろう。そろそろ空の水タンクは空になりそうなものを。あれ、と書いてみて空のタンク空、って変だなと思う。空の水タンクは空になり、その空の水タンクはまた空になり、そのまた空の水タンクは空になる。そういったわけで、空の水タンクは永遠に空になり、永遠に空にはならない。

F犬街でもNでも結構雨は降ってたと思うんだけど、Vの雨はやたらに湿っている。あれ、と書いてみて雨が湿ってるって変だなと思う。雨が湿ってなかったら何が湿ってるの。湿ってない雨ってどこに降るの。湿ってる雨の中には雨が降っている。またその雨の中には雨が降っている。そしてそのまた雨の中には雨が降っている。どこまで行っても雨が降っている。そう、Vの雨はどんなに拡大して蟻の蟻の蟻になって中の中の中まで覗いてみても、自分を普通の自分より大きくして象の象の象になって外の外の外まで見渡してみても、どの切り口にも、どの層にも、そのページにも、どの引き出しにも、全部びっちりと雨が降っていて、それが濡れるという言葉の内側まで濡れている。

こんな雨の中で、どうやったら濡れずに済むのだろう。屋根も傘も、雨合羽のフードも、Vの雨には役に立たない。室内に居ようが、ほかほかお風呂に肩まで浸かっていようが、ずっと奥の、本当は大抵濡れないはずの場所に雨水侵入。たぶん日焼けサロンで常夏風光線を浴びている人のところにも侵入してる。靴下なら濡れても乾かせるけど、この奥の奥の場所はなぜか手が届かないように作られているために、「しん」と濡れたからといって、こちょこちょとその真ん中にあるものを取り出してぎゅぎゅっと絞り、そのままストーブにかざして乾かしたりなんてできない。雨が続くと、街行く人が皆、この奥の奥を濡らしたままで俯いて行くのが見える。たまに、カラっと乾いていそうな人とすれ違う。とっつかまえて、「どうやってるの?」と秘密の方法を聞き出してみたいくらいだ。

やぎさんゆうびん」のまど・みちおさんが100歳になったって。すてき。明日に向ってお誕生日おめでとう。20歳になっても40歳になっても60歳になっても80歳になっても100歳になっても120歳になっても、ちっちゃな手で子供が拾い集めるのと同じくぽかぽかとして口に入れると甘くて、ポケットに入れると半分や粉々に割れても、そのどの欠片も透明でニコニコしていて笑いながら踊っているうちに、壊れていたはずのものがまたいつのまにか一つになっているようなほこほことした言葉と遊んでいる人ってすてきだな。小さなものを、つぶつぶを、糸くずの鳥の羽のほわほわを。雨のタタタタを。そうやって、毎日ニコニコとした言葉と戯れていたのならば、100歳になってもまだ、空は透き通り、光はくるくる回る。のだなあ。まどさんの窓をちょっと(永遠に)借りて、そこでケンケンしてる言葉と仲良しになってみたい。