さいた、さいた

今日もまた雨。まただよ、また!!!
風邪で報告が遅れたけれども、ベランダの菊の鉢・愛称「はなちゃん」が咲いた!
はなちゃんを買って来たのは5年前。その翌年に一度くらい咲いて、それからずっと咲かなかった。手入れも何にもしてあげなかったら、葉っぱしか出なくなり、去年の冬にはその葉っぱも枯れ落ちて枝だけになり、はなちゃんは存在の危機に陥った。
もう終わっちゃったのか。それとも眠っているだけなのか。コップ一杯の水を、その枯れた株にそろそろと注いでみた。
その時、微かな声が聞こえたんだ。
「お、せ、わ、し、て」って。

今年の春、柔らかな土を入れて植え替えて、肥料もあげてみた。もう一度、はなちゃんに会いたかったからさ。水くれも忘れなかったよ。そしたら、乾いた枝にある日ポコっと葉っぱが出現して、それがだんだんと大きくなって、そして夏にはしっとりと生まれたばかりの瑞々しい葉っぱの重なった茂みになった。でもまだ、花は咲かなかった。巷の菊の鉢が一斉に花を開いている秋になっても、まだ咲かなかった。

でも、ある日、莟を発見。そして私は、その時になってはじめて、はなちゃんの色をもう覚えていないことに気づいた。はなちゃんが初めてやってきた日は今とは別の光の中にあって、今とその時とが一つの時間の流れで繋がっているなんて信じられないくらい遠い。遠い日はやたらに陽射しが明るくて、手の届かないところにあって、心の目を開けているのがちょっとチクチクして、思わず瞬きする。はなちゃんは、たぶん、オレンジ色だな、と私は想像することにした。

さてさて。遂に花を開いたはなちゃんは、中心のところが黄色くて小さい花びらは天鵞絨の如き深紅であった。

さいた、さいた、はなちゃんの、はなが

とへらへら歌う先には、雨中の花。

はなちゃんは、最初に買って来た時よりもちょっとデカくなり、葉っぱもモサモサだし、花の付き方は左右バラバラでちょっと花屋の店先の商品にはなりそうにない。大人しく鉢に奇麗にきちんと咲いていた5年前とはちょっと様子が違うのだ。すっかりワイルドになり、野に咲く花の風情あり。
そして今日の光の中に咲く。曇っていても雨が降っていても、はなちゃんには光が見えるらしい。すっと頭を上げて。
ああ、はなちゃんが、帰って来た!