歩いて行って観る映画

曇り。一日ずっと、曇り。ベランダの植物連は、ぼちぼち悲鳴を上げ始めている。特にバジル。寒さに弱いらしい。ウチの中に避難させるか検討中。ミックスサラダどもはやたら元気。収穫近し。そして、青い実をつけたまま、もう枯れちゃうのかなと思っていたトマトが、なぜかここ数日どれもこれも色づきはじめた。寒さで枯れるのが先か、色づいて私に食べられるのが先か。ラストスパートだな。せっかく実ったのだもの、ぜひがんばって(トマトにがんばるとかがんばらないとかないのかもしれないが)私の口の中に飛び込んで頂きたい。

なにやら喉痛し。ついに来るのか風邪(そして、恐ろしきインフルの嵐)。喉の痛みを和らげるために蜂蜜を入れた生姜湯を飲む。体がホカホカして、気持ちよくなった。

ヨガ教室にゆく。ヨガの師匠L女史は、私の体が異常に固いことを知っていて、ポーズの説明をする時に、毎週必ずと言っていいほど、私をモデルにしてギュウギュウに絞る。「ほらねー、彼女にはこのポーズ、ものすごく大変なのよ。ここんとこ、そう、もっと骨盤をこうグっと下げて...胸をもっとグっと張って!」(グっと、というところはジェスチャー付き。いたた)などと言いながら、ギュウギュウやるのだ。ちょっと猫背になってたりすると、爽やかに私のポニーテールを引っ張り、「ほらほら、もっとこう、そう、伸ばして!」などと、更にギュウギュウやってくれる。あんまりギュウギュウやられてこっちは息絶え絶えになっていると「ほら、呼吸!」なんて声も飛び。そしてデモンストレーションが終わると、周りの生徒さんたちからなぜか拍手。よっぽどギュウギュウやられてる感じが出てるんだろうなあ。

そして、ギュウギュウやられてヘロヘロになっていると、L女史は「あなたは皆がこのポーズやってる間、見てていいから。ぐるっと見渡して、どの人が自分と似てるか見つけてご覧」などと笑う。ぐるーっと見渡して、「あの人かな」と70歳くらいのものすごーく体の固いじいちゃんを指差すと、「当たり」だって。70歳のじいちゃんと固さの首位を争っている私って... ... 。でもね、こうやってギュウギュウされる時、L女史の愛を感じる。彼女も昔、結構固かったんだってさ。

今日は楽しい火曜日。映画割引デー。午後9時すぎ、テクテク歩いて映画館へ。上映室が一つしかない小さな映画館。徒歩25分。本日の作品はコーエン兄弟の新作『A Serious Man』。コーエン兄弟にしては、かなり大人しめの映画。登場人物のクリシェ感と、ちょっとよくわかんない変な間の取り方と、プラス反則技の連続夢落ちなども出て、コーエン節にもちょっと飽きて来たかなという印象。歩いて行って観る映画は、でも、それだけで楽しい。F犬街に居る時も、映画はいつも歩いて行った。なぜかしら、映画館と呼ぶよりも活動写真館と呼びたくなるような、そんな夜風が吹く中を、映画の異界に遊んだ後で、またふらりふらり、歩いて帰る道すがら。空気がやたらと澄んでいて、それだけでわくわくとして、コートの裾を翻した一つのシルエットが、テクテク、テクテクと、宇宙空間の中を移動していった。

A Serious Man

A Serious Man