あの足の完璧な角度!

ええっと、10月10日って、日本では何かの日だったよな。横に−○−○と書いて「目の日」とかだったような気がするが、それだけだっけ? 「体育の日」だっけ? ああ、なんだか体育たいくta-i-kuっていう言葉の響き、やたらに脳に沁みるぜ。と、本来ならばスポーツなどをすべき季節なのだろうけれど、何とはなしにもう寒いし、樹々は黄色や赤になって、隙あらば今にも散ろうという気配。家にいても、足が寒いし。こんな日はいっそ、と久々に行くV図書館。

土曜日だというのに、しかもC国では来週月曜日は「サンクスギビングデー」なるホリデーであって、本日から明日あさってと連休であるというのに(それだから尚更なのか?)図書館はやたらたくさんの人で賑わっていた。多くは勉強している学生さん風。そしてまた多くは時間を潰しているらしき年輩のおじさん系。図書館というのは、人類永遠の憩いの場であるのだなあ(しかも無料。しかも知的な情報満載)などと、当たり前すぎて変なことを考える。

数時間に渡り仕事。大きな窓から差し込む午後の光が強くなって来た。今日はコートを着ないで外を歩くと寒く、着ると暑いという変わり目の変わり目辺りに位置している一日。くしゃみが出る。ああ、風邪など引かないようにせねば。Vではインフルうんぬんの話はそれほど聞かないが、マスク姿の人が全くいないというのも逆にちょっと不安なもの。ともあれ、手洗い励行。図書館なんかも、気をつけないとウイルスがその辺に一匹二匹浮遊しているかもしれぬ。

夜、DVDでアントニオ・ガデス主演のカルロス・サウラ監督『カルメン』を見る。同監督のフラメンコ三部作の2本目。1本目『血の婚礼』に比べて、ちょっとドラマが過ぎるかなという感じもあるけど、この恐るべきテンション。パッション。火花が散るような踊りって、なかなかお目にかかれないのだが、アントニオ・ガデスは目線だけで焦がすね。

カルメン [DVD]

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この映画、フラメンコ・ダンサー達のリハーサル姿を追ったドキュメンタリー風フィクションの形式で撮られていて、一見シンプル&ストレートに見えるのだけれど、結構奥が深い。ドキュメンタリーとフィクションのバランスが絶妙で、音と映像の関係もとても面白い。無音(無音楽)部分も多く、ダンスする時の衣擦れの音、靴音、ささやきなどをそのまま拾っているような部分の空気感が良い。それ以外は踊りのための音楽が堂々と全面に押し出されて来るのだが。たぶん踊る体と音とが完全に結びついているからなのだろうな、音がBGMとして分離していない。そして、不思議なのは、優れた踊りと音楽というものは結びつくと同時に拮抗しあっているからなのだろうか、音が映像の奴隷にならずに、ものすごく強く生き生きと際立って蠢き回っている。不思議。

なんだか、フレンチ・ニューウェーブ映画みたいな雰囲気もありで、なかなか楽しめる映画。いや、それにしてもアントニオ・ガデスって気高き野獣って感じ。いや、あの足の線。あの完璧な角度。彼が動くと踊りの一つの到達点が見える。すごい。