嗚呼はあ月

トマト16号収穫。だいぶ実の大きさが小さくなり、形も完全な球形から細長いカプセルのような形に変化してきた。ミックスサラダを更に間引き。まだ丈が5センチくらい。サラダと呼ぶにはちと小さすぎる。どこまで育ってくれるのか、観察続行。パプリカは一つ生ったきり。紫色でピカピカしている。もう一ヵ月くらい成長の気配なし。レシピを考えて、収穫しよう。花ちゃんの莟が、昨日よりもはっきり見える。ある朝、露を含んで咲くのだろうか。しっとりとした花弁を一本一本開いて。彼女は眠りから目覚める。花ちゃんが、ああ、帰って来る。

9月はちょっと傾斜した。途中まではせっせこ走り続けていたのだけれど、燃料が切れて坂をずるずる下り、坂の先には崖があり、そこから谷底に転がり落ち、幸いにも切り傷擦り傷くらいで済んだのだけれど、そこからぽてぽてと歩いて登る道は険しく遠く。体は重く弱く。途中で突然眠くなり一回休み、ぼんやり空を見て一回休み。やたら休み多く。進まない歩、焦る心。その心の中を怠惰が蝕み、ついでにもひとつ一回休み、などと休みの大安売り。それでもぽてぽてと心もとない歩は続いていたのか、月末の今になって、転がり落ちる前の場所がようやく見えるところまで辿り着いた。はあ、人生山有り谷有り。

寒くなって来た。そう、今年もまたあと3ヵ月と数日を残すばかりになったのである。この肝心なところでずるずると後ろ向きに滑り落ちてしまった自分が悲しいが、既に起こってしまったことを嘆いているだけでは何にも変わらない。途中で昼寝一回休み〜などやっていた時には、それなりの心地よさもあったのだが、今となっては傾斜した9月は忌々しいのみ。10月11月12月を逆傾斜として目的の場所まで到達することができなければ、私はきっと「ああ、はあ、むーん」と、いやあな音を大晦日の夜に立てるであろう。その不快な音を何度これまで除夜の鐘をBGMに聞いたことか。

ここからは形振り構わずゆく。髪振り乱し、棒っきれの杖をつき。ある日は肉まんを口に頬張ったままで疾走し、ある日は歩きながら眠る。目的の地はかつて自分の外側にあったけれど、今それは内側の奥の奥にある。それは他の人には見えないし、何の意味もないような場所なのだ。立ち上がれ10月。走れ11月。迸れ12月。

というわけで、今年の下三ヵ月は、たいへんなことになりそうだ。それもこれも除夜の鐘BGMの上にあの「ああ、はあ、むーん」という後ろめたい音を乗せないための涙ぐましい努力なんである。と、やる気満々になったところで、「除夜の鐘なんてVにはないじゃ〜ん」という声が聞こえた。「ああ、はあ、むーん」確かにそうだ。勢いを削いでくれるじゃないか、その悪魔の声。いや、それでも。世界宇宙どこのどのへんに居てもだよ、私の心には聞こえるのだよ、あのお山から聞こえて来る静かな除夜の鐘が。見てろよ悪魔。今年は「むーん」などと言わずに、微笑んで年越してやる。