花火の話は長くなります

今日も雲ひとつない晴天。今日はV市の夏の花火大会がある日。晴れでよかったね。水曜日と土曜日の夜に、2週間に渡って4回花火が上がる。花火が上がるのはV市の「イギリス海岸」。海の花火なので、沖に停泊した船から打ち上げる形式。何しろ日が長くて10時くらいまで明るいので、開始時間が遅い。ええっと、たぶん10時...かな。なんて暢気なことを言っているのは、とりあえず今夜は出張る予定がないから。日本一の大花火大会のある街Nで育った身としては、V市の花火大会はやっぱり「ちっちゃー」って感じでそれほど食指が動かない。でも、浜で見る花火もいいだろうなあ。来週あたり行って見ようかしら。

と、まだ日が高いのでのんびりしているが、やっぱりこれでも花火が上がり始めたら、ウズウズして外に飛び出て行っちゃったりするんだろうなあ。血が騒ぐ。DNAが踊る。喧嘩と聞いたら駆け出す江戸っ子のように、花火と聞いたら出張らずにはいられないNっ子。花火の種類やデザイン、上げ方、見所などもやたら詳しいNっ子。「昇曲導付八重芯変化菊」とか「ベスビアス超大型スターマイン」などという、他の街の人には「?」な専門用語も、N市では子供でも普通に知っているし、N市で「ナイアガラ」と言えば、カナダとアメリカの国境にある瀧のことではなく、橋に仕掛けて瀧のような効果を出す仕掛け花火を指すことになっている。

あの、どーん、どーんと上がる音が、たまらない。花火は色や光であるけれども、やっぱり音である。火の玉がぐわわわっと昇り、一瞬の溜めがあって光の花が一気に開き、どーんと体に来る。腹に来る。骨の髄に来る。花火はまた、タイミングの妙でもある。花火なんて、まあ次々どんどんと上がればいいんでしょうと思っている人も居るかも知れないが、スターマインや尺玉連発などは、上げるタイミングが非常に重要なのである。花火師さんは今はコンピューター統御によってこれを行っているらしいのであるが、優れた花火というのは、「そう、そこそこそこっ!」と思わず叫びたくなるほど次々と気持ちいいツボを刺激する指圧名人の技のように目が耳が体がマッサージされる。それは、音楽のツボを絶対に外さずクライマックスの感動へと導く名オーケストラのようでもある。そう、花火はカンドーです。わあ、わああ、わあああ、わああああああああ(まだ上がる、まだ上がる、まだ上がる)わあああああああああああ!!!(このあたりで脳天は既に地上からぶっ飛んで、天空をくるくる回っている)花火は、最高のアートだと思うな。消えて跡形も残らないところもステキ...。と花火のことを話し出すとつい興奮してしまう上に、どう言葉を尽くしても、やはりあのカンドーが上手く伝わらなくて、文章がどんどんだらだらと長くなってゆく。花火の音とタイミング、そして真のカンドーの瞬間は残念ながらTVの花火中継では伝わらない。どうしたらいいのかって? 迷わずN市へ走れ! N市の花火を見ずして、花火を見たと言う事なかれ...だっ!(ところでN市ってどこ?)

...とこちらはV市。ふふふ、今夜はひとつV市花火の実力がどのくらいのもんか見せてもらいましょ(やたら対抗意識が強かったりするのも花火っ子の特徴かも)。
なんて斜に構えながらも、やっぱり上がり始めるのがとっても楽しみ。ああ、花火って、いいな。

ところで、昨日見た映画は『The Hurt Locker』というイラクに駐屯するアメリカの爆発物処理部隊を描いたフィクション。なんでも女性の監督らしいのだが、大変にハードな映画である。何しろ爆発物処理部隊なので、いつ何が爆発するか分からないという緊張感が2時間くらいずっと続く。アメリカの駐屯を歓迎しないイラク市民と米軍兵士の間の緊張。しかも、部隊に命知らずの男が配属されて来て、部隊の中の緊張も高まる。戦争映画ってのはいろいろあるけれど、この映画は自分が戦場に実際に入り込んでいるような、そんなリアルな触感があって、映画が終わった後も、しばらく感覚がV市に戻って来れなかった。兵士同士の会話なんかも、やたらカジュアルなんだけど、実際にはこんな感じなのかな、というそんなリアリティがあったし。メロドラマ的な音楽をほとんど使っていないのも好み。沈黙を基調とした控えめなサウンドスケープで緊張感倍増。TVでも映画でもここぞ! というところで感情的な音楽を入れて説明しちゃうことが世の中あまりに多いので、こういう作品に出会うと、ホっとする。

本日、時給査定以来初めてお仕事を依頼して下さった方より「お給料」の支払いがあった。
給料っていって、次があるわけじゃないですけど。
初めてお給金を貰った女工さんみたいに、白い封筒をしっかりと握りしめて夏の日の中に立ち尽くしてしまいました。
依頼主の方と封筒の中のお金と、それをとりまく世界の全部に「ありがとうーーー」と心の中で叫びつつ。

と、そんなに大切なお金をどうするのかと思いきや。

その足でトコトコとお店へ行き、「オーガニック土」と植木鉢4個を購入。
初任給で土を買い、これからもっと大きなものを育てようかなーという、そういうシャレでもないんだけど。
でもやっぱり。いろんなものが育つといいなあ、という願いをこめて。
これで土を待っていた植物の面々を植え替えてあげられる。