雨なので泳ぎました。

今日は雨。そして今日は配達物を待っていなければならないので、空間移動ができない。かといって一カ所にじっとしてもいられないので、本日はインターネットの海をどこまでも泳いでみることにした。まあ、過去3〜5年くらい、毎日こうしたバーチュアルな空間移動ばかりやっていたために、すっかり現実空間の身体が萎え、魂を吸い取られるような恐ろしい体験を経た後だけに、溺れないように浮き輪、救命胴衣なども装備して慎重に「水」に飛び込んだ。

久々に長距離の漂流をやったのだが、やっぱり疲れた。魂がちょっと吸い取られた。でも無事に帰って来たけどね。途中で朝食用のグラノーラをオーブンで焼いたりして甲羅干しをしつつ、またダイブ。インターネットという海はゴミやヘドロがあちこちに浮かび、ヘンテコリンで醜悪な生物なども生息する奇怪な水域で、どこまでも暗く遠く、途中で迷子になっちゃうこともしばしばなのだが、とめどなく広く深いだけあって、美しい魚やピカリと光るお宝などもあちこちに隠れている。それを見つけるために、怖い思いもしながら、あっちに行ったりこっちに行ったり、穴の中にもぐり、砂を蹴散らして泳ぎ続けるというわけだ。

と、本日もドロドロっとした水の中を泳ぎすぎてかなり脳がどよよんと疲労したが、いくつかお宝らしきものも採取して帰って来た。

お宝がぜんぜん見つからずに終わる日もあるので、今日はまだマシな方だな、とずっと椅子に座ったまま泳いでいたので、足が一日分萎えた夕方に、疲れた頭で本日の泳ぎを振返る。

さて、この「お宝」。魚なのか貝なのか、それとも鉱物砂金の類なのか。焼いて食おうか煮て食おうか、それとも磨いて指輪にしようか。どうもすぐに食べられるようなものではないようなので、しばらく引き出しの中にでも入れておくことにしようか。などと、現実世界で本日の夕食の魚をフライしながら考えた。

全くねえ。変な世の中になったものだ。家の中で水泳ができるなんて、ねえ。泳ぎ回った末に、足の筋力が前より衰えてるなんて、ねえ。

こうやって採集したお宝は、タヌキ製の葉っぱのお札みたいなところがあって、私は本当のところはやっぱりそれを信用していない。
明日の朝になったら、引き出しの中の宝物は灰になって、風に吹かれて消えちゃうんじゃないかといつも少し疑っている。こうやって集めた情報というお宝は、まあなんというか、そんなものが世界のどこかにあるらしい、という風の便りか地図の端切れくらいに考えて、いつか自分の足と筋力とで本当にその場所に行き、そのモノを喰らい、その人に愛のパンチをくらわし(あるいはくらわされ)、本当にそこにそれがトクトクッっと生息していることを確かめるまでは自分の心の深いところには入れない。それまでは、やっぱりこいつらは食えない魚拓くらいのつもりで、ちょっと距離を置いて接しておかねばならぬ。それにしても。魚拓ばっかり増えて本当の魚はいるのやらいないのやら。変な世の中になったものだ。そのせいかな、なんかいつも内側が空っぽである。お腹が空いているのに、周りにあるのは食えない魚拓ばかり。

明日は、外にでよっと。本当の海で泳ぐのは、まだ寒いけどね。