メッセージだったのかしら、あの石ころも

今日の空間移動にはヨガ教室が含まれていたので、夕方には空間どころか意識までどこかに移動しそうになった。犬もあるけばヨガに当たるV市なので、ヨガなんて珍しくもなんともないのだが、私が通っている教室はアイアンガー・ヨガという補助器具を使う流派で、これが初心者に毛が生えたくらいの、しかも体が生来ものすごく固い私にでもとっつきやすく、なんというか、気持ちいいんだよなあ。

本日使用の器具は「バックベンダー」と呼ばれるもので、カマボコみたいな形をした器具の上に仰向けに寝転がり、胸の辺りをぐっと反らせて、胸を思いっきり「開く」ための装置である。要するに、ちょっと形の変わった台みたいなのの上に背中を乗っけて、しばしそのままの形で寝転がっているだけなのだけれど、これがものすごく気持ちいい。あんまりリラックスしすぎて、今日は何度も途中で寝ちゃいそうになった。

この、胸を「開く」形は、コンピューターを仕事で使う人には特におすすめのポーズ。小さなディスプレーを見ながらキーボードを打ってると(特にラップトップは最悪)、両肩がぐっと内側に入って前屈みになり、首が前に出て胸がぎゅっと閉じる形になりやすいのだ。この「バックベンダー」一家に一台欲しい優れもの。でもしかし、これがあると、リラックスしすぎてすぐに昼寝モードに入ってしまいそうだな。パソコン仕事が多くて、夜寝付きが悪い人なんかは、バックベンダーの上に20分も横になってると、そのままスースー寝ちゃうことでしょう。

と、夕暮れを前にして、すっかりリラックスモードに入り、このままほっといたら意識がどっかに飛んで行ってしまいそうな宵であったが、もう一カ所くらい身体の空間移動をしようというわけで、先週あたりから映画館にかかっている『おくりびと』を観に行って来た。なんだか、これも意識が飛びそうなテーマではあるのだが。

かなり前から先が読めちゃうところと、音楽がここだっというところでモロに感情のツボに入ってくるところが残念だったけど(もう少し変な間とかあってもいいかなと思ってしまうのだが...でもそれじゃアカデミー賞は取れないんだろうな、きっと)、全体としてはかなりストレートに楽しめた。(楽しめたと言うよりはストレートに泣けたと行った方がいいかもしれないが)前に座っていたデカいカナダ人のにーちゃんも盛んに啜り上げそして鼻まで擤んでいた。伝わったようです、日本の心。無言のメッセージ。石で心を伝えるエピソードが出て来た所で、そういえばウチのオヤジさんも、石をよく河原から拾って来ていたなあと思い出した。あれも、何かのメッセージだったのかなあ。

などと、もの思う初夏の宵。映画館をふらりと出ると、空気がいつもよりも少し透明で、街灯の明りが笑っているように見えた。