私の麦藁帽子をかぶって、おばあちゃんが笑った

月曜日に成田から発つというのに、わざわざ昨日Nまで戻って来たのには訳があった。
今回の旅のテーマであったソージの総決算をやろうというのである。といっても、やり残したソージを一日で片付けるというのではない。何するのかって?

フリマ出店(ひょえー)。

今回のソージで不要物と見なされたブツの数々を、売っぱらっちゃってしまおうという恐るべきプランなのです。すごいっ。

フリマの達人であるネコ姐さんと一緒に、フリマを初体験の身でまたもや本日出陣するという、昨晩疲労困憊していた人にはなんとも過酷な日曜日。そこまでやるか、やめとけば。死ぬよ。などと周囲から心配の声が多かったのだけれど。前から噂に聞いていたフリマ。一度やってみたかったんだよね。実は。

朝寝している暇などない。朝から出品物に値札を貼ったり、箱に詰めたり、大忙し。それを車に載せて、フリマ会場に運ぶ。しかも今回のフリマの近くには、駐車場がない。とにかく車から荷物を降ろし、会場まで台車で運ぶ。さすがフリマの達人・ネコ姐さん。台車まで持ってるとは。この荷物運びがなかなかの重労働。商品も今回は箱で4,5個はあるし、箱に収まらないような形のものもあるので、なかなか手強い。既に汗びっしょり。

フリマ会場に行くと、既に他の「店」には人だかりができている。出遅れたか、と焦りつつ商品を並べるのだが、並べてる端からおばちゃんたちが「それはなに?」「そっちはなに?」と聞いて来る。すごいな、この熱気。殺気といった方がいいくらいだ。すいません、まだ開店してないんです、ちょっとまっててくださいね... 。などと言いつつ、必死で商品をならべる私とネコ姐。まだ朝10時だというのに、かなり日射しが強い。ネコ姐の「フリマ七か条」および百戦錬磨の知識に従い、ビーチパラソルや水ペットボトルなどは既に準備してあるので、安心だけど。昨日おとといの東京攻めでどっと疲弊している私は、果たしてこのフリマバトルの勝者となれるのか。ちょっと体力に不安が残るが、そこは気力でカバー。

さて、問題の商品であるが、ほんとにこんなもの売れるの? というものがずらりと目の前に並んでいる。

靴道楽をやってた頃の古い靴。大学生なのに「あなた小学生?」と聞かれたことすらある「小学6年生の少年風」ファッションをやってた時代のワケのわからん衣料品・小物など。いつどこで誰が買ったのか今となっては不明の「いやげもの」などなど。フリーマーケットであるから、ガラクタであることを恥じる必要はないのだろうが、まあそれほど売れないんじゃないかな、というのが正直なところであった。

ところが!

売れました、靴。一番ウケたのは、F犬街で買ったサンダルを、おじさんが自分用に買って行ったこと。ま、なんというか、男女兼用デザインってことで。まいどあり〜。

そして、小学生ファッション時代の麦わら帽子を、おばあちゃんが自分用に買って下さった。ずっと昔の自分の姿とリボンが後ろに下がった麦わら帽を被ったおばあちゃんの姿がズレたり重なったりしながら見えて、なんだか人知れず照れた。可愛く着こなしてね、おばあちゃん。まいどあり〜。

そして、昔の男装趣味の忘れ形見サスペンダーは、カッコよく使ってくれそうなおじいさんが購入。まいどあり〜。

そして、昔お気に入りだったカンカン帽(確かフランスで買ったんじゃなかったかな?)も、帽子を集めるのが好きだというおじいさんが買っていってくれた。なかなかお目が高いっ!

この他、引き出しの底に眠っていた歯磨き粉、障子糊、未使用の香水、スウェーデンの空港でずっと昔に買って家の隅に転がり続けていた長靴下のピッピ人形などにも買い手がつき、午後1時くらいには、かなり品薄になってきた。

人間の購買心理というのは不思議なもので、いらないものは10円に値下げしても、やっぱりいらないんだよね。
今回売れ残ったものは、前回のフリマでも売れ残ったものが多い。2回のフリマで売れ残ったものは、可哀想ではあるが、誰の購入意欲も刺激しなかった、誰も欲しくないモノってことなんだろうなあ。最後に残ったこうしたモノモノはこれで心置きなくゴミに出せる。と思ったが、なんだか残っちゃったヤツらがいとおしくもあるなあ。『赤鼻のトナカイ ルドルフ物語』の中に出て来る、世の中からズレていて誰も欲しがらないmisfit toyたちのことを思い出したりして。

いやあ、それにしてもよく売った。ほとんどの品物を100円とか200円とか、場合によっては50円とか10円なんていう値段で売っていたのだが、(しかもフリマのお客さんは、値切るのを楽しみにしているので、必ず値切られる!)驚くなかれ、最終的には1万円くらいの売り上げがあった。これからフリマ出品料の1000円を引いて、本日の黒字9千+α円。(会場で行われていたビンゴでトイレットペーパーを当てたので、それもプラス。しかし、隣りで「子供店長」みたいな凄腕の子供がおもちゃを売っていて、ついつい「小さい仲間達」を買ってしまったのでマイナス150円)不要品が処分できて、これだけの黒字ってすごくないか?

そしてこの黒字分は、今回のソージのご褒美+明日の旅立ちの餞として、ネコ姐さんが全額を私にプレゼントしてくれた。この一日の汗と、麦藁帽おばあちゃんやカンカン帽おじいちゃんの笑顔の結晶であるこの美しいお金の一部を使って、新しいカード入れを買った。この一日の、人との触れ合いの時間と感謝の気持ちをいつまでも忘れないように。
フリマ、なかなか楽しかったなぁ。