セレブなシカってどんなシカ?

今朝は歯医者訪問から始まった。普通ならば歯医者行くのヤダとか、歯医者キライなどという声が聞こえそうであるが、昔からなぜか私は歯医者さんに行くのが好きだ。ウィーンキーン、ガリガリガリ。などという、昔風でキンキン神経に沁みるような時代にも、電動イス、水がピユーっと出て来て小さなコップを満たすうがい用の水盤、なんとも薬臭い空気などがどちらかと言うと好きだった。サドかな。というよりも、自分の体の一部を職人さんが修理しているようなあの妙な感じと、宇宙船の中のようなインテリアや備品がどこかSFチックで、それが楽しかったのだ。

でもまあ、昔の歯医者さんというのは、正直なところかなり痛かったし、ちょっと怖かった。

さて、イマドキの歯科医。日本に帰って来るといつも近所の歯医者さんに検診とクリーニングをお願いするのだが、これがもう大好きで、毎日通いたいほど快適である。待合室はものすごく奇麗だし、予約制なので待たされることもなく。受付のお姉さんはカワイイし、歯科衛生士さんは美人だし。先生は優しいし。診察室には癒し系の音楽が流れ、何やらよい香りがする。ラベンダーかなにかのアロマ水がそっと焚かれている模様。昔は椅子を倒すと先生や歯科衛生士さんとお見合い状態で恥ずかしかったものだが、最近は美容院で髪を洗う時のように目の上にそっと布のようなものをかけてくれるので、オソロシイ治療器具が回転しながら迫って来るのを見たりせずに済む。そのアイマスクも何かよい香りがするぞよ。うーん、思わずリラックス。先生はリラクゼーションの儀式かなにかのように、静かにそっと歯の一本一本を確認する。歯科衛生士さんもとってもジェントル。羽根か何かに触れるように、優しく丁寧に歯や歯茎をチェックしてくれる。

思わず眠っちゃいそうなくらい、リラックス。この感じ、この音、この香り。どこかで体験したことがあるような。あ、そうだ、これはエステサロンとかスパとかいう類の空気感だ。日本の歯科医、恐るべし。ああ。なんてセレブな私の歯。歯医者に行って心も体もリフレッシュ〜って、ちょっと変だけどね。私の歯医者好きはこれではとどまるところを知らず。昔はサドだったのかもしれないが、今はむしろ正統セレブ癒し系だな、これ。

V市(久々に登場!)の歯医者ってのは、今でもまっすぐサド系です。オフィスはかなり雑然としてるし、歯科衛生士さんはやたらカジュアル&荒っぽいし。まあカジュアル&フレンドリーなのは良いのだが、歯形を取る時にピンク色の粘土みたいなのをやたらたくさん口に詰め込まれ、はみ出てるのに〜、下にボトボト粘土が落ちてるのに〜、もう口の周りにピンクのネバネバがはみ出してへばりついてすごいことになっているのだが、慌てた様子もなく、更に詰め込む詰め込む! もうちょっと丁寧にやってよ、おねえさーん。と叫びたくなるのだが、何しろ口の中からピンク色のスライムが流れ出ているので叫ぶこともできず。ようやく粘土が固まって口からピンクの塊がガバシと取り出されたが、口の周りには粘土のカケラがべったりくっついたままである。口濯ぐための、例の小型水盤も見当たらない。ティッシュボックスを渡されて、「あっちの水盤つかっていいですから」と部屋の隅っこにある普通の洗面台を指さされちまいました。

うーむ。まあ、保険制度が違うんだし。結構あれで腕はいいのかもしれないし。となんとか納得しようとするんだけど、歯科衛生士さんの人数が少ないのか、「あ、ちょっとここ持ってて下さい」なんて、口の中に入れた器具を自分で持たされたり。ひとたび「J-セレブ歯科」を味わってしまった私は、どうしても楽しめませんでしたカジュアル&プリミティブ歯科。先生はもうそれだけで歯が欠けそうなくらい「ガッ、ガッ、ガッ」なんて歯を突っつくし。やめてぇ〜。ごむたいなぁ〜。

というわけで、余程のことがない限り、日本に帰って来た時にるんるんスキップしながらセレブシカに行っちゃうのでした。このセレブシカって日本では一般的なのかしら。それとも、たまたま近所の歯医者がそうなのか...? どちらにせよ、もはやサドシカ、マゾシカ、原始シカなどには、もう逆戻りできそうにありませぬ。

歯医者で朝からセレブ気分を味わった後、次なる目的地へ。もうかれこれ10年くらいお世話になっている郷土のカリスマ美容師に髪を切ってもらうのが今日のメニュー。一年に一度か二度しかカットしないというのに、6ヵ月後、1年後ですら髪の形が崩れないという驚異的なカットの腕を持っているこの方。飾らない人柄もステキで、この美容師さんに会うのが日本に帰って来た時の楽しみなのだ。なんか、とってもホっとする。そして、技術がシブい。いわゆるシャカシャカシャカっなんてパフォーマンスで見せるタイプではなく、ぱち、ぱち、ぱち、と少ない鋏数で正確に大胆に切って行く。高い技術がないと、こういうシブい斬りはできないんだよなあ。この、ぱち、ぱち、ぱち、が大好き。そして、いつも変わらぬ笑顔。アシストする若手美容師さんたちも、はきはきと感じがよい。またまたここでもすっかり癒され、ああ、なんてセレブーな一日。

で、どんな髪型になったかと言うと、ズバリ「キャサリン・ゼタ=ジョーンズ」。っはははっ。(「ちがーーーーーう!」というブーイングの嵐が聞こえる...)
ま、自分の気分だけはそーなんだから、しばらくそー思わせておいて。いや、でもやっぱりちょっと無理か。いや、気分ね、気分気分。