日本のあの顔、この顔(&ハッピーバースデー)

昨日、密教の寺で多くの仏像と対面した一行。京都の寺は十分に満喫したようにも思えたが、しかし、ピヨコの心はなぜか晴れなかった。せめて禅寺の一つも見せてやりたかった...。密教のスタイルが日本の仏教の全てだと思われてしまっては。うーむ。いかがしたものか。有名どころで銀閣寺か龍安寺にでも連れて行ってあげたかったのだが、どちらも現在修復中で、足場なんかが組んであって興ざめ(タクシーの運ちゃん情報)だと言うので、断念。ぬーん。どうしよう。ぬーん。

というわけで、朝食を早々に済ませた一行は、宿近くの南禅寺にもう一度アプローチ。昨日の雨後の晴天。なんとも清々しい朝。禅寺散策には最高の時間、気温、そして空気。これまでの寺と違って、また朝ということもあり、修行僧らしき人々の姿があちこちに見える。凛とした雰囲気、背筋が伸びるような清浄さ。

こちらのお寺、方丈庭園という枯山水のお庭が美しい。ピヨコはくっきりと輪郭をかたどられた柔らかそうな苔の絨毯の上にそっと乗っかってみたい欲望にかられつつ、さっきから身を引き締めている。小堀遠州作の『虎の子渡しの庭』とか、いろいろとあるのだが、まあ説明はしなくてもいいでしょう。とーちゃんかーちゃん&息子は仏像パワーとはまた違った禅寺パワーにさっきからもう十分に圧倒されている。「ボクはこの寺が一番スキ」と興奮する息子。ピヨコは仏像も好きなのだが、実はやっぱり禅寺が密かに好きだったりする。噂ではピヨコは禅宗らしいんだな、これが。(とりさんの家に宗派があるってのもなんであるが)そうか、それでさっきから、やたら態度がマジだったのね、ピヨコさん。いや、それにしても、南禅寺には狩野派の襖絵(国宝)なんかも目白押しで、見所多し。

しかもこのお寺には、ローマの水道に習ったとかいうアーチの美しい昔の水路もあって、とーちゃんはやたらそれに興味を持った様子。実際に水が流れているのが見える所まで登って確認して、満足そうなとーちゃん。とーちゃんは何でも確認するのが好きらしい。好奇心の塊である。

日本の仏教のもう一つの顔を堪能した一行は、ほとんど自分の家みたいに和んでいた京都の宿の宿守さんに別れを告げ、次の目的地、世界遺産ミシュラン三ツ星の里としてやたら最近注目度の高い飛騨高山へ。おお。電車の中は外国人の山。ミシュラン恐るべし? だんだんと緑の濃くなる車窓に興奮の声を上げる息子。その合間にも京都駅でゲットした地ビールやサンドイッチなどを食いまくっている。日本の食が、どんどんと米国人の胃袋に納まって行く様は、壮観ですらある。真の国際交流は胃袋から始まるということだなあ。あっぱれ日本の食文化。目移りするくらいの高品質美男美女な食べ物がニコニコ笑いながらこっちに向って一斉に走って来る国日本。その美女の一人一人を、食べ尽くす男、息子。律儀ですらあるなあ。

高山に無事到着。本日の宿は気楽なホテルに小さな温泉(スパ)施設がある形式で、家族連れの姿多し。ホテル内は備え付けのパジャマ&スリッパで歩き回ってよいとやら。しかしながら、白パジャマ姿のひとびとに角角で遭遇するというのは、スタンレー・キューブリック的体験でもある。変だな、これ。といいつつ、すぐにパジャマに着替えてスパに走る息子。そしてピヨコ。またしても自分ばっかり楽しんでるんじゃないの? という疑問が横切るピヨコであるが、本日はピヨコの誕生日ということらしく、まあ、こんなワガママも許してやろう。ピヨコ曰く、ツアーガイドのお仕事が大変なので、誕生日どころじゃないですぅ。ってことで、今年の誕生日はパスしますぅ。ってことで、歳を一つ取ることもパスしますぅ。って。都合のいいやつだ。若作りで歳を誤摩化すピヨコ。ま、所詮はピヨコですからね。歳なんてあってもないようなもんだから。好きなようになさい、そこで湯船に浸かって「いっいゆうっだあぁあああっな」とか鼻歌歌ってる和毛の小動物。暢気なもんだね、まったく。

と、誕生日をいいことに寛ぎすぎたピヨコ。夕食の手配まで気を配ってなかった。なぜか夜がものすごく早い高山。こういうところは純正田舎なのだなあ、ある意味素敵。だがしかし、とーちゃんかーちゃんのお腹はグゥと鳴っている。なかなか見つからない食事処。迫り来る夕闇。ここでピヨコはお友達である「ネコトラベル」に電話して急遽ガイドを依頼。ネコトラベルの尽力により、一行は「隠れ家的な高山の謎のハンバーガー屋」になんとか到着。いやあ、本当に隠れ家的なお店だ。ネコトラベルのナビシステムなしには到着は不可能であっただろう。ホっと一息、頬張るハンバーガー。うまいっ。とーちゃんかーちゃん&息子も「おいしい」を連発。息子なんかは「今まで食べたハンバーガーで一番うまい」とまで言っている。アメリカ人がこれまで食べたハンバーガーの中で一番うまいってどーいうことだ。やるなあ、高山のハンバーガー屋。なんでもここの店主は一度もアメリカ国に行ったことがないのだそうだ。海外のものを取り入れて、改良して、ますます美味しくしちゃう日本の食文化の極地を見るような思いであった。

ぶらぶらと帰る夜道。涼風。果たしてとーちゃんかーちゃんは温泉初トライなるのか。裸で湯に浸かるという人生初の体験をやるのかやらないのか、興味は尽きない高山ステイの夜は静かに更けてゆく。