食の饗宴。ピングーではなく神戸牛!

さて。
本日は食の饗宴である。究極の日本食でカンドーを演出しようという目論み。まずは正道・天麩羅。そして米国人を唸らせむとのブランド牛。この豪華絢爛の二種を昼夜に配したメタボとの闘いの如き一日。盆と正月と誕生日とクリスマスが一緒に来たような、日本人なら聞いただけでげんなりしそうなゴージャスさ。しかし、滞在日程が限られている今回の旅行なので、もう強引にこの2種を一日で食して頂く!

まずは銀座の老舗天麩羅屋へ。ここで、N市から駆けつけたねーちゃんが合流。とーちゃんかーちゃん&息子+ねーちゃん、そしてピヨコ。国際天麩羅とはこのこと也。外国人ゲストが多いというこの店、さすがに外国人扱いに慣れている。職人さんが一つ一つ揚げてくれる珠玉の天麩羅。いきなり海老の足がカラリと揚がって出て来て、ぎょぎょぎょっ、とーちゃんかーちゃん&息子は果たしてこれを食べられるのか! と一瞬緊張が走ったが、なんというか高級料理店の雰囲気に飲まれてか、何の疑問も持たずにポリポリ食べている。おいしい、などと言って。よかった。あなごが出て来たところでかーちゃんが「これって、ウナギじゃないの?...」と怪訝そうな顔をした。彼女は絶対にうなぎだけは食わないと旅の前に宣言していた人だ。だが、大枚叩いての天麩羅屋、これを残されてはもったいなさ過ぎる。ということで「いえいえ、これは体の細長い魚で、決してうなぎではありません」と適当なことを言ってごまかしたら、あらそう、とか言いつつ食べていた。ほっ。

天麩羅のコースをかき揚げ&ごはんまで完食。お、とーちゃんはごはんをみそ汁に漬けて食べてますね。ニューウェーブ。そして更にはシジミの肉まで貝殻からフォークでかき出して食べている。そこまでやるか米国人、あっぱれ。

と、大盛況の天麩羅パフォーマンスの後は銀座のデパチカで散歩。っていうか、ただの散歩のつもりだったんだけど、あっちからもこっちからもチョコレートやお菓子のサンプルが差し出され、なんというかデザート散歩になってしまった。その間も、かーちゃんは迫り来るデパチカのキラ星の如き食材食品のオーラに当てられ、目を丸くしている。そして、息子は...。お、また泣きそうになっている。信じられない程のクオリティーを誇る日本のデパチカ。アメリカ人をも泣かすデパチカの威力。脱帽。

ここでねーちゃんと名残を惜しみつつ別れ、一路神戸へ。
そう。なんと今夜は神戸牛ディナーが企画されているのだ。持つのか体力。大丈夫なのか胃袋。それよりもっと、大丈夫なのか財布。

などという一抹の不安をものともせず、疾走する新幹線。満腹のあまり口を開けて寝ているとーちゃんかーちゃん。
夕暮れ迫る頃に辿り着いた神戸は、雨だった。

インフルエンザ蔓延ということで、新幹線の中からマスクをかけてやたらマジな顔をしていたピヨコ。連日の飛ばし過ぎ&食い過ぎで、ややお疲れの様子。大丈夫か、ピヨコ。無事日本牛で米国人をギュウと言わせることができるのか(ジョークじゃないよ)。

ホテルで休む暇もなくタクシーを捕まえ、レストランへ急ぐピヨコ。旅行ガイド&通訳&ご家族のケアを一手に引き受けているので、脳細胞が裏返りそうな感じになっているここ数日。半日くらい前からとみに英語と日本語がちゃんぽんになって、日本人が日本語を喋っているのがどうも聞き取りにくかったり、妙な現象が起こっていたのだが。

遂に。

ひょえー。

ピヨコトラベル創立以来のこっぱずかしい事件勃発。

タクシーの運ちゃんが神戸弁?(明石弁ってのか?)丸出しのラフ系関西のガラガラおっちゃんコワモテ族で、最初っから何をいっとるのか分かんなかったんだけど。レストランの場所が何となく分かってない風だったので、思わず焦って「サングー駅の近くです」と言ったら、おっちゃんに「なんやそれ」と凄まれた。あ、やばい。脳の配線が。と、慌てて「あ、サンノミヤですね、サンノミヤ」と小声で付け加えるピヨコ。黙りこくるおっちゃん。冷えた空気がすうううーっ。凍り付くピヨコ。しーん。何か言ってよおっちゃん。恐すぎ。しばらくして、ようやくおっちゃん「神戸初めてやろ」とか「三宮をサングウ言うた人はじめてや」とか「神戸ゆうたらサンノミヤが一番有名や」とか、あきれ果てたように連呼。初めてじゃないのよー神戸ーるるるー。しかし、ピングーじゃあるまいし、サングーってのも面白すぎだよ、ピヨコ。もう思いっきり赤面するピヨコ。神戸人のプライドを汚してしまった。ごめんなさい、おっちゃんー。でも、ツーリストにもちょっとフレンドリーでもえーのではないかー、神戸の運ちゃんよおおおおおお。すると。「実は、私、N県の出身なもので。あんまり関西は詳しくなくて」と言い訳したピヨコに、「ああ、最近また地震あったんじゃないの、N県」と、荒っぽい中にも人間らしい心遣いが見える運ちゃんの一言。そうか。神戸とN県は地震繋がりなのだなあ。恥じ入ったりピヨコ。ツアーガイドたるもの、国際人たるもの、N県出身者たるものピングーだのサングーだのと言って、ここの住人になんと失礼なことをしてしまったのだろう。ごめんなさい。もっと勉強して出直します。と、心から反省したピヨコ。「今後二度と間違えません。失礼しました」と宣言して下車。ひゅう。

神戸牛ディナーは、その華道か茶道のようなシェフの焼きパフォーマンス、無駄のない動き、宝石のように輝くベスト牛からたちのぼるオーラ。米国人も思わず溜め息の究極の牛。牛。牛。もう、皆言葉少なになるくらいに牛の霜降り部分が存在の内部から極楽へと彼らを導き、日本の牛恐るべし! と脱帽しつつ完食。まあ、今やピヨコトラベル食事部のサイフは空っぽであるが、一生に一度かもしれぬ神戸牛。堪能していただいて嬉しい限りである。

と、食の饗宴デイも無事終わりに近づき、そろそろ席を立とうか、というその時!

運ばれて来たのは「Happy anniversary」とチョコレートで描かれた皿に盛られたデザートセット。なんと、この旅がとーちゃんかーちゃんの結婚50周年の旅だと知ったレストランからのびっくりプレゼントであった。そして笑顔を浮かべた清潔感100%のウエイターさんが、「記念に皆さん一緒にポラロイド写真をお撮り致します」などと、写真のプレゼントなども出て。もうこれでカンドーしない人がいたら驚きだというくらいの畳み掛け押し寄せるカンドーのサービス。これにはちょっとしたことでは驚かないとーちゃんかーちゃんも、度肝を抜かれ、またサービス天国日本の懐の深さに感じ入ったようであった。

すごいなあ。サービスニッポン。

ピヨコも我が国のことながら、ここまでやるか。と驚いた。

やるな、神戸。さすがは国際都市。ちなみに皆さん、三宮はサングーではなくて、サンノミヤですので、今後100年1000年に渡って、間違えませぬように。(ピヨコ以外に誰も間違えないってーの)そして、この不思議な洋風都市神戸のスケールの大きなホスピタリティーが1000年10000年続きますように。