ホモ・ルーデンスは檻の中...

そうか、日本は今ゴールデンウィークなのだなあ。この時期に日本に居ないのは13年目。ゴールデンウィークが如何なるものであったのか、記憶が遠い。思い出せるくらいの場所には、特に旅行に行ったという思い出も見当たらないので、たぶん人出を避けて、家に籠ってでもいたんだろう。でも、更に遠い日々、長い石の滑り台とちっちゃな動物園とお城の形をした資料館のある、町外れの山に父母姉と一緒にピクニックに出掛けたりしたような気もする。学校が連続で休めるのが、やたらと嬉しかった。夏の顔がちらっと見えるような真っ白な光の中にその思い出はある。

それにしても、ゴールデンウィークっていうネーミング、すごいなあ。金色ですよ、金色。黄金週間と書くと、更にすごい。一体誰がこのネーミングを...とwikiってみたら、映画屋さんらしいですね。大映。さすがのネーミングセンス。この時期、映画館にお客が押し寄せるので、そうネーミングしたんだって。ってことは、ゴールデンの金のイメージは金の延べ棒札束の山って感じか。知らなかった。

盆暮れ正月黄金週間。これは日本人の休暇の基本だけど、F犬街に住んでた頃にゃ、驚いたね。きゃつら休暇が長い長い。バカンス、ですもの。ウィークじゃなくて、マンスですもの。平気で一ヵ月、二ヵ月と休暇を取って、地中海辺りにバカンスに出掛ける。バカンスって何をするんですか、と日本人はここで聞くだろうけど、バカンスって何もしないで食ったり寝たり、飲んだり寝たり、日光浴したり食ったり、本読んで寝たり、ぼんやりしたり飲んだり、散歩して食べたり、パーティーしたり寝たり、きれいなおねーちゃんにラブしたり、しなかったり、泳いだり食ったり、とまあそんなことを繰り返して、一見生産性のない時間を過ごすことである。

なぜ同じ地球上の人間でありながら、一方はゴールデンなウィークってだけで狂喜し、もう一方はゴールデンなマンスを当然だと思っているってのは、どーいうことなんだろう。F犬街だけでなく、EU諸国はこのゴールデンマンスを採用してるわけでしょう? 恐るべしユーロ帝国。数ヶ月にも渡るバカンスを消費しつつも、国の経済が成り立っていてユーロも強いってんだから。休み下手な日本人などはつい、「そんなに長いバカンス取ったら、ボケない?」とか聞きたくなるのだが、思いっきりリラックスすることで、また仕事で頑張れるからいいんだっていうことだ。バカンスのない人生なんて信じらんなーい。と彼らは口を揃える。よく学びよく遊べってやつか。生理的欲求に素直な人たちとも言えるなあ、ユーロ人。日本だっても、残業残業で働かされても、一年に1ヵ月とか2ヵ月とかまとめてバカンスが貰えるんだったら、結構ヤル気出るよね。ゴールデンなウィークなんかでお茶を濁してないで、太っ腹でマンス単位で休暇くれてみたらどうだろう。そしたら日本経済は日本国は崩壊するのだろうか。一ヵ月バカンスが施行されても、やっぱり他の人の手前なんとなく休暇が取りにくいので、誰もその制度を利用しないなんてことになるんだろうか。

せめて、ゴールデンウィークを任意で取れることにしたらどうだろう。皆で一緒に休むからどこに行くにも渋滞すし詰めになっちゃうわけで。もうこの際、国民の休日のチケット制ってのはどうだろう。「私、明日、敬老の日にしたんでお休みします」とか言って、好きな時に使えるの。んな阿呆なことを考えちゃうのは、やっぱりなあ。日本人はもっと休暇を取った方がいいものなあ、と思うからです。ううむ。

さてV市はどうかな、と見てみると。詳しくは知らないけれど、ユーロ帝国と日本の中間くらいなんじゃないだろうか。何ヵ月もまとめてバカンスを取る人がいるかどうか分からないのだが、よく一週間とか二週間とか休暇を貰って旅行に出掛けたなんて話を聞く。こちらでの日本人のイメージは「ものすごく働く人たち」。日本に行って働いてみたいという人は結構いるのだが、「でも、休暇が全然ないんだよね...」と尻込み。あながち嘘でもないので、いやそれは違うとも言えないんだよね。確かに休暇少ないもの、日本。

日本の国際化はまず休暇から初めてみたらどうだろう。ウィークと言わず、マンスで。もうポーンと休暇あげちゃう。ウツ病の増加、自殺者の激増なんて話を聞くと、ぼちぼちその時期に来てるんじゃないかなと思っちゃう。よく働き、よく遊ぶ。知的なホモサピエンスもいいが、ホモルーデンスの側面をもっと開花する。思う存分遊んでリラックスしたんで、ついついまた働きたくなっちゃうような人生のデザイン。まあ、一度ものすごくがんばって成功すると、がんばりすぎないでいる自分が怖くなって、ついついまたがんばっちゃうってのはパターンでもあるよな。でも、生産性という観点から言うと、遊ばずに働き続ける場合と、十分な休暇を取ってリフレッシュして仕事にまた取りかかる場合と、実はそれほど差がないんじゃないか、という気がしている。いや、たぶん、確実に後者の方が、新しい閃きを仕事の中にたくさんもたらす点で、生産性ドUPなんじゃないだろうか。

惜しいな。もっと休めばいいのにな。
私が社長ならいきなりマンスの休暇。休暇を楽しめないような人は社員不合格。
その代わり、残りの日々は思いっきりクリエイティブに働いて頂く。
仕事と遊び。この二つは表裏一体だということ。どっちが欠けても成り立たないってこと。意外と当たり前のようで知られていないこの事実。遊べよ遊べ。勤勉日本。