ぶらぶら

天気がいいので、お昼近くになって、ぶらぶら外に出た。
第一目的地:ダウンタウンのO寿司。オペラ寿司のOじゃないよ。日本人経営のとっても日本っぽいお寿司屋さん。ここのランチ弁当が突然食べたくなった。ランチ時でお客さんが一杯。一人なのでカウンターへ。ご主人もサブの職人さんも忙しそうに魚を切ったり、巻き寿司を巻いたりしている。なんとなくカウンターで職人さんとお見合い状態で座っているのは照れる。なるべく目線を合わせないように濃くて美味しい緑茶を飲んだりしながら間を持たせようと努力。だが、どうしてもキョロキョロしちゃうんだな。...と見渡すと、左側のテーブルには3人連れの外国人のおっちゃんら。私のすぐ右のカウンター席には日本人のおっちゃん一人。うぐぐ。東西のおっちゃんに両脇からサンドイッチされているなあ、本日もまた。

おっちゃんサンド...具が私。なんて、下らないことを考える隙間もないくらい、右のJおっちゃんが大将をトーク攻めにしている声の存在感が空間を占有。聞きたくなくてもどうしても耳に入ってしまうんだよな日本語。職人さん方はあまりの忙しさに、ちょっと生返事気味に対応してるだけなんだけど、お客のおっちゃんの方はもうそんなことには構わずにトーク炸裂! ウェートレスの日本人の女の子が「お茶、大丈夫ですか?」と笑顔でお茶を継ぎ足すと、おっちゃんすかさず「いやあ、やっぱり女は愛嬌だね!」。女は愛嬌...この言葉を実際に耳にしたのは、何年振りかなあ。脳の奥の方がニヤニヤした。ああ、このノリだと、突然こっちに話を振って来たりするんじゃないかなあ、ヤだなあ。ヤだなあとか言いながら、結構一緒になって盛り上がっちゃったりするんだよなあ、私。などとドキドキしてるとこにサラダ到着。まずこれを食べてるフリをすれば(って、本当に食べてるが)おっちゃん攻撃を避けられるかも。と、サラダをつついていると。

何やら、にやけた歌声が左側から昇って来る。なんだっけ、この曲。ま、曲はどうでもいいけど、なんだよこの歌。と首を90度左に向けると、どうやら歌っているのは外国人おっちゃん三人連れのうちの一人らしい。おっちゃんというよりはじーちゃんという年齢の人達だが、ベースボール帽を被って昼間っからワインを空けている。観光客さん? っつーか、この段階ではただの酔っぱらいである。寿司やで演歌ってくらいならまだしも、なんだろうこのにやけた60年代ポップソングみたいなのは。

ううむ。と唸ってるとこに弁当到着。うまい。ささみフライもカラっと揚がってクリスピー。マグロの刺身がちょっと凍ってるが、まあそれはよしとして。心の籠った味がするぞ。うんうん。お味噌汁も美味しい。親子丼の具みたいなのが入ってたり、よく考えてみると不思議な弁当なのだが、弁当箱のそれぞれの仕切りの中に日本の味が大集合してるような楽しさがある。飢えてるんだよなあ、やっぱり。このきちっとした日本の味。くーっ。うまいっ。刺身のつまの大根までうまいぜ。外国人なら残すであろうこのツマたち。こいつらもいただきっ。

と自分の中でかなり盛り上がって食べてるところで、あれっ。
何か左側の席で事件が起こっているようである。

さっきのおっさん3人組に日本人ウェートレスの女の子が捕縛されている。
「アア ユウ ジャパニーズ?」
ヤらしい、イントネーション。このおっちゃんの頭の中の日本のイメージが「ゲーシャフジヤマ」であることが声の中に映像のようにはっきりと見えた。来たな、おやじらめ。
と、その時点で既に、おやじの一人がウェートレスの手を握ってナデナデしている。でもさすがはプロ。ウェートレスのねーちゃんはそれでもニコニコしながら「オー、ナイス」とか言っている。そこで更に図に乗るおっさんら。女の子の手にチューである。やだあ〜。そしてまたソング。「ワッタワンダフルワールドーォー、ワッタワンダフルデーィ」なんだこりゃ。もう少しで日本人救出活動に立ち上がりそうになっちゃった。これって国際交流か、それとも接客業の悲しい定めなのか、あるいはストレートにセクハラか。
と、そのうち女の子も無事解放され、弁当完食。貧乏性なのかどうなのか分かんないけど、私はいつも皿を洗う必要がないくらいの完全完食。これは今に始まったことでなく、中学生の頃にも「おめーって、ほんとに残さんできれいにたべるなー。えらいてー」などと男子にそれを指摘され、赤面したことがあったのだから、三つ子の魂百までとはこのことかや。

...などと遠い昔を思い出しつつ、満腹の腹で第二目的地:Book Offへ。棚を流すこと1時間。かなりねちっこい客だなあ、はは。
永井荷風の「ふらんす物語」と語学本2冊を買って次の目的地へ。

第三目的地:コルドバ通りの骨董品やへ。ここは変なガラクタがたくさん置いてある上に、店番をしているおばさんの、いかにも素性の分からない謎めいた風貌が好きで時々寄る。古い箱購入。最近、作品のための箱を集めてるので。骨董品店での買い物には慣れてないけど、ひょっとしたらと思って値切ってみたら、あっさり5ドルくらい値が下がった。あそこですかさず「もう一声!」とか言えばよかったんだったかな。こんな半ば壊れかけた1920年代の箱なんて、誰が買うんだか。って、あら、私が買ってるわ。先日来た時に目をつけていた顕微鏡のプレパラート保存用の木箱は売れちゃってた。あんなもん、誰が買うのやら。って、そうだ、私も欲しかったんだっけ。

第四目的地:V図書館。さて、今回はどこから攻めるかな。なかなかピンと来る本が見つからず、書架の間を行ったり来たり。万歩計の数字がどんどん増えて行く。中国人のおっちゃんたちに混じってしばし読書。いかにも本日の「おっちゃん日和」に似合った本を読む。この本に関しては後日。

第五目的地:タップ
なんと次の日曜日が「発表会」なのである。ひょえー。しかも、「コスチュームは下は黒、上は70年代っぽいクレージーなシャツ」。んなもの、もってないっての。

歩き疲れて日が暮れて。ぶらぶら、楽し。春爛漫。