玄蕃は橋に仁王立ち

忙しくなってきた。
心ここにあらずの態。
日常らしいことが、どんどん日常から押し出されていく。

それでもお昼にパンなんかを齧りつつ、
つい聞いたのがこれ。

元禄名槍譜 俵星玄蕃/豪商一代 紀伊国屋文左衛門

元禄名槍譜 俵星玄蕃/豪商一代 紀伊国屋文左衛門

三波春夫の『俵星玄蕃』だっ!

子供の頃、おばあちゃんと一緒に住んでいたので、
見るテレビは時代劇、
おばあちゃんの部屋からはいつも浪曲や漫才を録音したテープが響いていた。
どうやら知らず知らずのうちに体にその節回しや間が入ってしまったらしく、物心ついて東京に出て、普通の女の子が都会でやりそうな行動をたぶん自分も取るのだろうなあと思っていたにも関わらず、気がついたら新内だの講談だの、そんなのを聞き歩いていっちょまえに痺れていた。快楽の追求という点では、クラブ通いと大差はなかったと思うのだけれど。周りには理解してもらえませんでした...。

今日も、『俵星玄蕃』を聞きながら、「アー」とか「ウー」とかカリスマ指圧師の治療でも受けてるような変な声(声なき声)を上げつつ、最後にはマジ泣いた。

素晴しい芸に出会うと、空がサーっと晴れ上がって行くような快感と共に、腹の底から笑いが込み上げて来る。もう顔なんかニッタニタになりながら、それでも泣いているのである。

カタルシスってこういうことか。

いやあ、たまらん。