当日

時間が早く過ぎる日と、遅く過ぎる日というものがあるけれど、今日は時間が恐るべき速度で過ぎて、気がつけばもう6時。7時には会場入りしなければいけないというのに、まだラボで作業している。

間にあわない。間にあわない。間にあわないー。

夏休みの宿題の山を目の前に途方に暮れる8月31日の小学三年生の気分。しかし、宿題ならば先生に叱られてしょげて終わりだけれど、今日のはお客さんが待っている舞台なのだ。Show must go onなのだー。ごめんなさい、間にあいませんでしたーでは済まない世界なのだー。

何ヵ月も前から準備していたというのに、どうしてなのだ。
しかも毎回こんな感じだ。
神は吾を見捨てたもうか・・・なんて溜息をついている時間すらない。

大抵、いつも最後にやることになるのは、台詞を切り取る作業。
台詞を覚える、のでもなければ、台詞を声に出す、のでもなくて、小さな紙にプリントした台詞を切り取って台紙に順番に貼る。この吹き出しみたいなやつを、舞台の上の登場人物(人物といっても、見た目は羊だったりウサギだったりするのだが)が喋るのだ。

いつもパフォーマンスの時は、尋常ではない程に変な集中をして、不思議な世界に入り込んでしまうのだけれど、今日も随分と変てこな世界に入り込んでしまった。観客の笑い声などは時々耳に入って来るのだけれど、とにかく舞台の上のオブジェをどう動かすか、次はどうするか、なんてのをぐるぐると頭の中で考えていて、ただその小さな世界をどうするか、ってことだけに私は生きていたみたいだ。

一人でいろいろと操作するので、いつも「ああ、手が5本くらいあったらなあ」と思う。しかしそれは言い訳である。稽古を重ねれば、きっと2本の手でも10本分くらいの働きができるはずだ。要するに稽古不足、今日は猫の手も借りたいくらいに、いろんな場面で文字通り手が足りなくて密かに心中困ったりした。

ともあれ初演をなんとか終えて、やっと一息。

これからこの羊だのうさぎだのが宇宙の果て辺りでいろいろとやる世界を、ちょっとずつ育てて行くことになる。

朝顔日記:37日目:ごめんなさい、朝顔さん。今日は顔見に行く時間がなかったよ。

☆ 襟元の少し乱れて夏芝居