ひとびとの怒り

今日もラボのソージをして過ごす。ここ数年来の大ソージ。いよいよ新作の制作に本格的に取りかかるので、まずは身辺を整理するところから開始というわけだ。いつの間にか溜まってしまっていた不要品や、そういうものものが詰まった段ボール箱、塵埃の地層等に数年振りに手をつけたので、なかなか手強い。箱を開けて「うーん」と唸ってしまうような困難箱も多い。それでも大分思い切って捨て、配置を変え、掃き清め、くっきりと拭き取ると、空間が遂に凛として来た。

この別名物置小屋であったラボが凛である。リンリンリン。いい風が入って来る。久々に息つぎできたようなこの感じ。嬉しくて、思わずくるくる回ったり、不必要に佇んだりしてしまう。

夕方になり、あそうだ、今日は何か近所で催しがあるんだったと気づいて、埃まみれのジーンズ姿+怪しいキャップでぷらぷら出掛けてみた。オリンピック選手村が遂に一般公開される、というスペシャルデーだったのだ。市長が来て挨拶するとか、オリンピック選手のサイン会(握手会だったかも)があるとか、そんな噂を聞いていたのだけれど、まあ要するにオリンピック村として建設されたコンドミニウムがいよいよ販売されるという、その宣伝みたいな感じでもあるわけなのだけどね。

閉場時間まではまだ一時間くらいある時刻に到着したのだけれど、なぜか入口には強面の警備員がいて、フェンスの中に入れてくれない。他にも入れてもらえない人がたくさん周りに集まっていて、不満爆発状態。どうやら、中でデモが起こっているので、今日はおしまい、とかいうことらしい。なあんだー。とがっかりしつつ、もう一つあるという入口の方まで歩いてみたら、そちらからはいとも簡単に中に入れた。なあんだー。あんまり簡単に入れたので、逆にがっかりした。

選手村は、小さな新しい街、という感じ。とても人工的な感じがする。たくさん建物があるのだけれど、わざと一つ一つを違うデザインにしている。でも、そのわざと、な感じが人工的な感じを生んでいる。なんか、ガランとしてる。見るものも特にはなさそうだ。と、一番派手に目立っていたのがデモ隊。「目を覚ませ!」「貧しい人に家を!」「これは公営住宅じゃないぞ!」とかいうプラカードを掲げてシュプレヒコール中。この選手村は、最初は低所得者層の公営住宅になるという話だったのだけれど、結局は億ションのようなものとなり、普通にお金持ち層に販売されるらしいのだ。ひどいよね。なんだか、騙されたような感じ。嘘つき...は泥棒の始まりなのよ。などと密かに怒りの分け前を受け取りつつ、本当の話が一体どういうことなのか、よくは知らないので、「そうだそうだー」と声は上げなかったけれど、柱の蔭からデモ隊をじっといつまでも眺めてしまった。

☆ デモ隊は眺めるだけの薄暑かな