耳グルメ

今夜は耳が喜んでいる。七色の音のつぶつぶが弾けて、デーンと大きいのや、キーンと三角のや、尖ったのや、ザラザラしてるのやら、サワサワひそひそしてるのやら、つるつるして丸いのやら、透明で反射してるのやら、いろんな美味しい音を食べて帰って来たからだ。

So percussionというNYのパーカッション・グループのコンサート。
曲目の半分はSteve Reich。おなじみHand Clapping Musicで幕開け。
コンサートに来るのは久しぶりだったので、生音をキャッチした耳が「ん、ん、んん?」なんて言いながら目を覚ました。
ああ、美味しいなあ。楽しいなあ。奇麗だなあ。不思議だなあ。
ライヒの音の波間でほとんどトランス状態。打楽器は、筋肉や瞬発力や、人間のおおもとにある身体機能とつながってるから好きだ。パーカッション奏者の誰々さんなんていう表面の皮が剥がれて、生命そのものがリズムを刻んでるみたい。四人の体。四つの生命。そいつらが弾んで弾んで、ズレて絡んで、永遠らしき場所の近くで戯れる。

後半はDavid Langという作曲家がこのグループのために作曲した曲。こちらもなかなか美味しい。ティーカップやら植木鉢やらを並べて叩くのだけれど、そこから飛び出て来る音がとても懐かしく優しい。台所のような、庭のような、喫茶店のような、食卓のような。縁側のような。柔らかくて温かいものが静かに眠っている場所にチン、シャシャ、リンリン、などと立ち上る音。

耳は満腹となり、ちょっと雨の降る夜の街にぽわんと出て、濡れて帰った。