人類最大の危機の到来?

また晴れー。なんかもう街がピカピカしていて、眩しすぎる。どうしていいのか分からないよ、こんなに天気がよくっちゃあ。晴れ続きだからそんな気がするのかもしれないのだけれど、12月に入って、見えない流れが変わったような気がする。停滞していたものが、自分の力ではない別の大きな力によって、押し出されて行くような不思議な感触。易者さんだとか、占星術師さんだとかならこういう動く感じに言葉を与えてくれるのかもしれないけれど。何なのだろう、ええっと、今年は厄年だとかそういうのだったっけ。よく分からないけどさ。

運勢なんていうものに関しては、信じる人と信じない人がいるけど、私はどっちかというと、信じる方だな。というのは、世界だとか宇宙だとか更に名前のついてないような場所(大きい場所も、ずっとずっと小さい場所も)のことを考える時に、自分(だと普段思っているもの)の力を超えた力だとか運動だとか流れだとかいうものがないとは到底思えないもの。私などの小さな頭には想像もつかないようなことが向こう側にいつもある(あって欲しい)し、だから世界は(人間の)頭よりも大きいと、子供の頃からそのように直観してずっと生きているみたいだ。魚なんかの頭の中には、世界がすっぽり入ってるんじゃないかなという気もするけど。

などといつものことながら堂々巡りの空想をぽかんぽかん浮かべながら、夜の映画館に出掛ける。歩いて行く、今夜も。霜が降りるから厚着して、マフラーを三重に巻いて、手袋した手を摺り合わせながらゆくよ。映画館にはパラパラと観客がいて、熱いハーブティーの紙カップから伝わる熱の宵気分を楽しんでいるうちに上映がはじまる。映画は『Collapsed』。どこかの地下室かなんかの椅子に座った目つきのかなり鋭いおじさんが、カメラに向って世界人類の成り行きについて警告を発し続けるという、ドキュメンタリー映画。映画評には「今年一番怖い映画」だとか「これは一種のホラー映画である」だとか「劇場を後にする人は衝撃で震え上がるだろう」だとか書いてあったのだけれど、映画の中で語られるのはこのおじさんの視点から見た世界の現実のみ。でも、確かにコワいんだ、これが。

このおじさん、元LAの警察官で、その後フリーのジャーナリストを長年やっていたという人物。この人が独自の視点で世界と人類の欺瞞を斬る! という感じなんだけど。ちょっと妄想に走ってる感じもあり、論理展開の飛躍もあちこちにあって、そのまま鵜呑みにはできないんだけれど、でも全体としてはおじさんの言う事にも一理ある。例えばOILについて。化石燃料はもともと限りのあるもので、採取のピークを既に過ぎており、いつか(遅かれ早かれそれ程遠くない未来)無くなるものだと誰もが知っているはずなのに、誰もがそのことを無視している、ということについて。おじさんの理論によると、世界経済は資本主義でも社会主義でも経済の拡大がシステム自体の維持に含まれていて、どんどん地球のエネルギー(具体的には石油だとか石炭だとか)を使って拡大していく限り安泰なのだけれど、その拡大の折れ線グラフと、化石燃料の残り量の右下がりのグラフとがかちあってにっちもさっちもいかぬ局面が遂に来た! ということなのだそうだ。

人類があらゆる角度から崩壊していく時が遂に来た、とおじさんは警告する。彼を「予言者」と見る人もいるらしいし、また妄想に取り憑かれた狂人と見る人もいるらしい。私は、前から石油って使ったらなくなるんだよな、こんなに毎日そこら中に車が走っていて、食べ物が全部石油からできたプラスチックの入れ物に入っていて、そのゴミが山のように捨てられて、どこの家でもピッカピカに電気が灯っていて、誰もが毎分毎秒ガンガン電気を浪費していて、あら今月の電気代ちょっと高かったわねという感想くらいしかなくて、というのが不思議で仕方なかったので、結構おっちゃんの言葉はズンと来た。不思議だと思わない? 使ったらなくなるって、ずうっと前から知ってるのに、でもやっぱりそんなことはとりあえず見ないことにして、垂れ流し的に毎分毎秒使ってる、この文明って。ある日、ある朝、「あれ、電気が点かない」なんていうホラーが、たぶん確実に迫っているのにね。いつ誰が決めたんだろう。「まあ、なんとかなるさ」で当面は目をつぶるというやり方を。世界のいろんなところの、一つ一つの街の、一つ一つの家の、一人一人の人の、どの人もどの人も、みんな一様に目をつぶっているって、すごいホラーだ。ぞぞぞ。

と、このように、確かに背筋が少し寒くなり、おっちゃんの言う事もちょっと飛躍しすぎだけどな、などと思いながらもついつい頭が思考モードに入ってしまうというこの映画。なかなか秀逸なドキュメンタリーだ。ぼちぼち目を開けた方がいいよね、人類。現実は恐ろしいけど、目を開ければどこかに未来はまだ見つかるかもしれないのだから。智慧の力、精神の領域はまだまだ未開だぞ。人類もなかなかやるじゃん、と魚に言わせるためには、ぼちぼち目を覚まさないと遅いぞ、人類!