フカひれスープとの決別

今日は、V市水族館主催の映画上映会に行って来た。映画館まで徒歩20分。無料の上映会なので、どのくらい人が集まってるのか興味津々だったんだけど、4時の回ということで、子供の姿がちらほら見える他は、かなりガラガラ。観客は全部合わせても100人くらい。これから週末にかけて毎日上映会があるらしいので、これからもう少し人が集まるんだろうな。

さて、その映画は『Sharkwater』というカナダの若い水中写真家が監督した作品。フカヒレを採る目的の密猟のために生存の危機に晒されているサメワールドを追ったドキュメンタリー。密猟者が捕まえたサメのヒレを情け容赦なく切り取り、残りの部分を生きたまま海にポイっと捨てる様子はあまりにも残酷で、動物ネーチャームービーを期待してやってきたチビっ子たちには、かなりショックが大きかったかも。映画では、まずサメという生き物が、一般に思われているよりも恐ろしい生物ではないこと、何億年もの昔から生き延びて来たサメ族が海中の生態系に果たしている役割などが、シュモクザメの大群の美しい水中映像なんかに重ねられて繰り返し語られる。

シュモクザメって、なんとなく子供の頃から好きだったんだよなあ。あのヘンな頭の形が気になる。それが、何十匹も、ひょっとしたら100匹くらい、透明な青の中を気持ち良さそうに泳いでいる図。サメもこのくらい数集まって、ひとつの画面の中に収まっていると、オタマジャクシの大群みたいな感じで、なんかカワイイ。尾っぽをくねくねさせながら、ちょっとあっちを向いたり、こっちを向いたりしながら、気持ち良さそうに深く厚みのある透明な水の中に浮かんでいる。ぼーっと見ているだけで、いつの間にか遠い昔の懐かしい時間(生まれる前のもっとずっと前)に吸い込まれ、気がつくと映画館全体が透明な液体に満たされて、私もサメと一緒にしばしそこに浮かんでいた。

映画は更に、コスタリカのサメの密猟の実態を映し出す。うぐっ。残酷。ザックリ。流血。どろどろ。ぐしゃぐしゃ。ポイ捨て。そして、見渡す限りのヒレの山。貧しい漁師たちが高額で売れるフカヒレについ手を出してしまう経済的事情が背後には隠れており、そこにマフィアが絡んでいたり、国もその現状を見て見ぬ振りしていたりと、なかなか一筋縄ではいかないようなのだが、コレ、早く手を打たないと、海中のサメが総ざらいされちゃうよ。そしてサメが総ざらいされちゃうということは、サメが大きく関係している水中生態系が激しく崩れることにつながるらしいのだ。

今まで、何にも考えずにフカヒレなるものを供されるままに食べていたのだが、本日からフカヒレとはサヨナラだな。あの楽しそうに泳いでいるシュモクザメの群れを見ちゃったからには。これを機に、自分の食べているもの(そしてそれを食べているという行為)がいったいどこで何とどうつながってるのか、もうちょっと真面目に考えることにしよう。反省。

ちなみに『Sharkwater』は日本でもDVDが出てるみたいなので、海好きサメ好きの人には特におすすめ。ただし、間違っても映画の前後にフカひれスープなど食さないように。冗談ではなく。