あの、とんぼのいる、秋の、あの場所のために

今日うれしかったのは、
故郷Nの「原発」県民投票を求める署名が、必要数の4万筆に達したらしいという知らせ。
県民投票実現に向けて、一つ目のハードルをクリアしたということだ。
この運動は、原発に賛成・反対の立場を超えて、
住民の意向を地域の原子力政策に反映させる道を開こうとするものであるところに共感している。

遠く故郷を離れていると、どうしているのかとやたらに気になる。
ずっとそこに住んでいた時には、見えなかったものが、遠くからは見えたりもする。

あの頃、あの街に住んでいた頃、
何もたぶん考えていなかった。
まあ、誰かに任せておけば、いいようにしてくれるだろうって、
ほんとうに信じ込んでいた。
今頃は蝉がうるさい程に鳴き続けて、
もう少しすると、赤蜻蛉がやってくる。
そいつらを待って、空に向って腕を突き上げて、
その先に人差し指を更に突き出して、
群れの中の一匹がこの指先にそっと止まる、
すがすがしい、
懐かしい
透明な
風の吹いている
その場所のために、
その場所が、いつまでも、そこにあるために、
私とは何の関係もない、
ずっとずっとその先っぽの、
まだ見ぬ姿の少年の指先の、
一匹が同じ風に光り羽を揺らす、
その時間のために。

考える、今。
考える。調べる。考える。伝える。分からない。迷う。考える。聞く。

あのいちばんいっとう奇麗な場所を、
あの銀河年が中にすっぽり入ってしまうおおきさの時間を、
いないかもしれない誰かに任せられるだろうか。
誰かという人がもしいるとするならば、
その誰かは、わたし。
もしくは、あなた。
それはどこかにいるとかいわれつづけてきた、偉い人や立派な服を着た人では、ないらしいのだ。