虚構の芸術

DVDでサミュエル・フラーの"The Steel Helmet"を観る。

鬼軍曹ザック [DVD]

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これ観ながら、 市川崑の『野火』を思い出した。

野火 [DVD]

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兵士をヒーローっぽく描いたり、戦場にメロドラマを持ち込んだりする戦争映画はどうも苦手なのだが、この二つの映画はどちらも、戦争がいかに人間を惨めな存在にするのかを、情け容赦なく描き出す。

この当時のフラーの映画は、低予算で、日数も10日くらいで撮影されたらしい。明らかにセットと分かるショットと、ロケのショットが混じっているけど、そんなことは全然気にならない。演劇もそうだけれど、映画もまた、最初からそれが虚構であることを観客は知っていて、その虚構世界に遊ぶ芸術形態なのだから、「本物らしく」することにはある程度以上の意味はないような気がする。

隅から隅まで「本物らしく」するために予算を使い、CGを駆使する映画がイマドキの流行だけれど、この映画を観ると、映画の本質というのは、そんなこととは全く別のところにあるということに気づかされざるをえない。

脱帽。