徐々に、一生をかけて、あの透明さへ。

初夢は、よく覚えてない。巨大なウサギが放し飼いにされている牧場みたいなところで、ふさふさの毛をなでなでしたところは覚えてるけど。複雑で抽象的でもしかしたらちょっと哲学っぽい夢だったのだけれど、全体としてはどこかわくわくとした感じのあるポジティブな夢だったので良しとしよう。富士山やなすび、鷹などの姿は見えなかったけどね。

新春の朝に、まず音楽。去年のクリスマスプレゼントにもらったCDを静かに味わう。

Blu-spec CD バッハ:ゴールドベルク変奏曲-メモリアル・エディション-

Blu-spec CD バッハ:ゴールドベルク変奏曲-メモリアル・エディション-

グレン・グールドのゴールドベルクは、始まりの朝にも、終わりの朝にも、たぶん似合う。
このCD、1955年と1981年のグールドの2つのゴールドベルク変奏曲の録音が収められている優れもの。最終的に採用されなかった録音なんかの入ったボーナスCDもついている。

このCDの解説書の表紙に書いてあるグールドの言葉を読んで新春早々じんときた。

"The purpose of art is not the release of a
momentary ejection of adrenaline but rather
the gradual, lifelong construction of a state
of wonder and serenity." - Glenn Gould

ついつい「派手に一発!」なんて思いがちなのが人間であるけれども、アートの本当の意味というのは、そんなところとは全然関係のない、空の小さな一角に密かに満ちた透明さ、不透明でざらざらとしたものを毎日こつこつと篩にかけて、濾過して、選り分けて、内側の奥の方を丁寧に澄ませてゆく真摯さの中にだけあるということを、こんなにもストレートに彼は教えてくれる。わあ、というあの透明な驚きを、時間をかけてそっとずっと熟成していく。それは生きて行く、というそのこと自体とも重なっていく。

この言葉が、今年の座右の銘になりそう。今年のみならず、たぶん、これからずっと、この言葉のことを忘れない。